1巻を読んで、最新巻まで一気に買ってしまいました。
あらすじ
ぼっちJD、ギャルに酒をつくる。
「ナオリ、あたしの飼い主(バーテンダー)になってよ。」祖父に憧れて、バーテンダーを志す大学生、ナオリ。いつかは自分の店を…と考えるも、自宅に呼ぶような友人もおらず、ひとり楽しくもどこか寂しくカクテルを作る日々を過ごしていた。そんな彼女は半ば強引に誘われた飲み会で、自分と正反対のキラキラしたギャル、ひなたに出会う。お酒が飲めないという彼女には、ひとには絶対に言えない、重大な秘密があって…!?
この漫画のタイトルに「酒」とあるように、酒が話の中核となっています。酒にもいろいろとありますが、この作品でのお酒は「カクテル」です。お酒などを回したり、振ったりして混ぜるあれです。
キャラクターについて
一人でカクテルを作っていたナオリが、ふとしたきっかけで出会ったひなたの専属バーテンダーになり、そしてナオリの家に押しかけてきて同居生活がスタートします。百合ですね、自分大好きです。
あらすじでは「重大な秘密が」とありますが、タイトルでわかる通りひなたは「鬼」です。鬼の中でも「酒呑童子」と呼ばれる鬼の末裔です。そしてその末裔であるひなたたちは「人間からもてなされた酒しか飲めない」という呪いをかけられています。酒でしか空腹を満たさせないのに、です。そして酒を飲むと本来の姿に戻ります。わかりやすく言うと角が生えます、にょっきりと。
そんな酒呑童子の末裔であるひなたは人間の中で、人として生活を楽しむことを選んで実家から出ました。そんな人間社会の生活には酒がかかわってきます。一つがナオリとの出会いである大学の飲み会です。
飲みたいという欲と、飲んでしまうと角が生え、人間でないことがばれて生活ができなくなる……。そんなピンチの時に代わりに酒を飲んだのがナオリでした。
そんなひなたのピンチをバシッと救ってくれたナオリですが、基本的にはボッチの陰キャです。一人でカクテルを作って、写真に撮って、一人で飲むという女の子です。寂しい。
ぐいぐいと押してくるひなたに押されるだけでなく、ここぞというと時には覚悟を決める芯の強いキャラです。自分に自信がないからこそ人のために覚悟を決められるとも言えるかもしれません。そして酒が好きで、おじいちゃんにあこがれているからこそ、酒が関わるときには覚悟をしっかりと決めます。ひなたがバーテンダーにと選んだ理由はそんなところに惹かれたからでしょう。
1巻ではナオリとひなたが主軸となり話が展開しますが、2巻以降(厳密には1巻の最終話からなんですけど)は少しずつキャラが増えていきます。人間陣営も鬼陣営も。
他のキャラクターは二人からすると確かにサブキャラなのですが、それぞれが良いキャラをしています。何よりも面白いと感じたのは「人間と鬼の差異が出てくるのに、その溝が次第に小さく感じる」という違和です。
何を言っているんだとなりますが、本当にそうなんです。朝食だけでも、人はご飯、鬼は酒と違います。それが次第に当たり前となり、他の鬼が出てきても「鬼だから酒を飲むよね」となります。最初は違和感しかなかった部分も次第に日常のように感じてきます。その話の作り方が上手いなぁと思うのです。
カクテルがテーマ
前述の通り、この漫画は「カクテル」がテーマです。
カクテルは様々なお酒だけでなく、果物を絞ったり、ハーブを入れたり、ノンアルコールのものを混ぜたりと種類が豊富です。作中ではナオリが様々なカクテルをひなたたちに提供します。
毎回何かしらのカクテルが紹介され、そのシーンに合わせたものが出てくるので「そんなカクテルがあるのか」「それもカクテルなんだ」と感心してしまいます。そしてどんな色なんだろうと気になって調べながら読んでしまいました。
そんなカクテルですが、作り方はかなり強引なものです。
ご存じの方も多いと思いますが、バーテンダーはシェイカーを振って本来混ざらないであろうものを強引に混ぜます。ナオリのおじいちゃんはそれを「強引だけど素敵な魔法」と言っています。
この言葉は「人間と鬼」という本来混ざるはずがないものが、周りに振り回され、振り回してどんどん混ざっていくストーリーとも重なっているように思えます。キャラクターのところで書きましたが、最初は違和感がある異物が、カクテルのように色々なことがあって振り回され、色々な人や人以外のものが入ってきてさらに混ぜられて、そうして次第に変わっていく。そうした話の流れがカクテルに重なって感じられるのです。
1話ごとに振られて、混ぜられていく二人の生活。そしてそこに入ってくる友人や家族たち……。最後にはどんな味になるのかが楽しみな漫画です。